2月1日に演る「藤十郎の恋」は一年ほど前にも演っているがその時の空間は20人ほどのカフェだった。今度は300人以上のホール。当然、空間のサイズに合わせて表現のスケールを変えなければならない。まず、作品のスケールが合っているのか。それは考えた上での選択だ。
一個人の何でもない日常を描いたような作品は大きな空間にはあまり向かない。「藤十郎の恋」はどうだ。主たるシーンはせいぜい3メートル四方の近距離での対話だ。だが藤十郎は京の歌舞伎を背負ってまさに命がけの恋を仕掛ける。これは描かれる世界のスケールとしては十分大きい。そして演者がその話のスケールに合わせて大きな表現にしなければいけない。そのために何が必要か。やるべき事はたくさんある。
夜中に他人の家の離れで口説くシーン。リアルに考えると絶対に大声では話さない。しかし、声とエネルギーは後ろの席まで届けなければいけない。
マイクは使わない。反響板は立てるけど。