芝居を始めていろいろな戯曲を読むようになる。劇団主宰の書く現代口語のホンを読んでいるうちは何の問題もない。そのうちシェイクスピアの戯曲に出会う。ページを捲るごとに読めない漢字や意味の分からない言葉が登場する。そこで初めて自分がいかに日本語を知らないかを認識する。そういう言葉をあたりまえに読める人もいる訳で、その人達はどこで覚えたのかと思う。三島由紀夫は子供の頃 辞書を読んでいたらしいが、そういう例をのぞけば殆どは文学作品を通してだろう。
残念ながらぼくは読んでこなかった。小学生の頃は世界文学全集で僅かの作品を読んだ。怪盗ルパン・シリーズはかなり読んだ。中学の頃はけっこう小説を読んでいたが推理小説が中心で、それ以外は筒井康隆や星新一などで純文学と呼べる類は読まなかった。10代後半は殆ど読まなかった。本棚には音楽雑誌とバンドスコアがあった。
会社に入ってからは仕事のために技術書を読む。そのうち心理学を中心とした人文系の書籍を読むようになり色々つまみ食いした。これは役に立っている。
そして今とても後悔している。もっと文学と接していれば良かったと。少しでも取り返そうと近代・現代の日本文学を少しずつ読んではいる。読んだら読んだで「もっと早く読んでおけば」と、また悔しくなる。
そんな時は「シェイクスピアだって夏目も三島も知らなかった」などと負け惜しみを言ってみたりするのだ。