あちこちで公演が中止になっているが、中止を決めた人達には色々な理由があったと思う。電気が来ないんだからやりたくてもやれない。自粛ムードに何となく乗っかっちゃった。余震が続く中、上演中に地震や停電があったらお客様の安全を保証できない。批判がこわい。電気の使用量を少しでも抑えなければならない。元々やりたくなかった、等々。
もちろん、そういったことを考えなかった訳ではない。考えつつも、やることを決めたはずだ。「こんな時にやらなくても」とか「こんな時だからこそ」とかは関係なく、目的を持ってやろうとしたことをやり遂げるということ。平和なとき、しあわせな時だけのための音楽ではなく、不幸な人を励ますための朗読でもない。日常をこえた美しさ、楽しさ、心地良さ、エネルギーを日常ではない空間で作り出す。そんなことが目的だった。
しかし、ここ数日の出来事は日常を非日常に変え、さらには僕たちが表現したい非日常を押しつぶしてしまうほど強烈だった。これを押し返さなければと思っている。人間は生産性の高い日常だけで生きているのではない。直接は役に立たない非日常的な作り物もきっと必要なのだと思って僕は表現活動をしている。
復興の元気づけならばまだ早い、もっと後だという意見も多い。だけれど、これは自分たちの問題なのだ。被害の少ない東京の日常が必要以上に押しつぶされている。これは自分たちで押し返さなければいけない。いつまでも負のエネルギーに支配されたり、ばらまいている訳にはいかない。だから僕はやる。
河崎卓也