「河崎卓也読宴会Vol.1a」のプログラムより
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この作品は去年の10月に「怪奇幻想百物語」という朗読会で一度口演した作品である。その時は、落語への憧れからつい色気が出て、台本を持たずに落語に近い形で演ったのだが、稽古不足もあってなんともギクシャクしたものになってしまった。そこでやっと「やはり朗読屋は読みで勝負しなければ」と眼が覚め、朗読としてやり直そうと決めたのだった。
この台本はいくつかの速記本(口演を文字に起したもの)を元に僕が編集したものだ。参考にしたのが志ん生、志ん朝、小三治のもの。志ん朝のが凄い。要点をかいつまんでいるのではなく眼の前でリアルタイムで進行しているような細かい描写。夫婦の対話から見える人間の本性。怪談としての怖さとは別の意味で怖い。これだと思って1時間ぐらいあるこの志ん朝版をベースに20分ぐらいに刈り込んで、志ん生版と小三治版のおいしい所を入れ込んで落語台本として仕上げた。それを今回朗読するに当り、地の文を書き言葉に変えて多少読み物っぽくしたつもりだ。
それでもほとんどがセリフで「どこが朗読だよ」というような口演になるだろう。もし、朗読というスタイルにこだわるお客様がいましたら、ごめんなさい。