僕が中学生の頃、「中一コース」という雑誌があった。学研からの発行で、「中二コース」「中三コース」と進化していった。ライバルは旺文社の「中一時代」。どちらも、年間購読すると魅力的な景品が付いてきた。ラジオとかカメラとか、年代によって変わっていくのだが、僕の時は万年筆だった。鉛筆やボールペンやサインペンぐらいしか使ったことのない十二歳にとって大人の筆記用具を手にした喜びはたいへんなものだった。自分の名前を練習したり得意になって筆記体で英語を書いたり、半年ぐらいは大事に使っていただろうか。しかし、いつの間にか使わなくなって、万年筆に魅力を感じることもほとんど無くなっていった。
さて、時間は四十年ほど戻って昨年末、関わっているVASCの事務局員が職を離れることになった。そこで餞(はなむけ)にボスが彼に贈ったのが万年筆だった。そのとき、この世に存在していることすら忘れかけていた万年筆が急に輝いて見え、「俺も万年筆を使ってみようかな」と思ったのである。
おそらく高級なほど書きやすいのが万年筆ではないかと思うのだが、いきなり高級なのを買って勿体なくて使わずじまいなんてことはよくある。なので、まずは安い物を買って普段もどんどん使って慣れようと考えた。そこで購入したのが、セーラー クリアーキャンディ(透明ゴールド) 1,080円。ペン先はやや硬めだが気持ち良く書けている。
「万年筆いいじゃない」と思い始めると他の物も使ってみたくなるのが僕の性格。次に手にしたのが無印良品のアルミ丸軸万年筆 1,155円。これ、ちょっと線が太いのである。というかインク出すぎな気もする。同じF(ファイン、細字)なんだけど。僕はクリアーキャンディの方が好きかな。
インクの補充はカートリッジの交換で出来るが、セーラーのカートリッジは独自規格。無印良品のはヨーロッパ共通規格だ。他に、コンバーターと呼ばれる、インクをボトルから吸い取って保持する器具を使うこともできる。僕は学生の時に製図の授業で使ったボトルのインクを捨てずに持っていたのでコンバーターを使って補充することにした。この黒のボトルインクが無くなったらブルーブラックにするつもりだ。
当然だが、万年筆で書いた文字は消せない。でも、それがいいのだ。
滲んだり、かすれたりしながらもくっきりと残る文字。間違ったら二本線で消したり塗りつぶしたりして書き直す。そうしてノートは汚くなっていく。そうして自分だけのノートが残る。人生みたいじゃないか。それでいいのだ。
セーラー クリアーキャンディ
https://www.sailor.co.jp/lineup/fountainpen/11-0103
無印良品 アルミ丸軸万年筆
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4547315136865
さらに安価な プラチナ プレピー
http://www.platinum-pen.co.jp/fountain_preppy.html