はっきり言って「朗読は素晴らしい」なんてことは僕は言えない。むしろつまらないと思っている。少なくとも他の表現、たとえば演劇、落語、音楽、映画などと比べると娯楽として楽しませるのは難しい。
朗読が面白い/つまらないのではなく、“その”朗読が面白いかつまらないかだと思う。それは他の表現も同じで、お笑いだから面白いとは限らない。ただ、確率として期待できるということは大いにある。
なぜ僕が朗読をやっているのか。正直、たまたまきっかけがあったから、手軽だからというのも大きい。突き詰めて考えると、文学が好き、声・言葉の表現が好きということか。
ひとつの事象を言葉の力で何倍にも膨らませて表現する。心地よい呼吸、リズム、音韻で文章にする。それが文学の力だと思う。これは映像では伝えられない。黙読では楽しみきれない。そんな文学というものを声で伝えたい。
で、その魅力を伝えつつ実演として面白くできるか。それは朗読者次第なんだろう。せっかくの名作をぶち壊すのも朗読者次第。読むのは簡単、楽しませるのは至難。それが朗読。